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「スタッフの勝手な近況」から(4)

マンスリー広告批評〈01.6月〉

「マンスリー」と銘打ちながら、普通のマンスリーとは逆に、現実の月を追いかける形式となってしまった「マンスリー広告批評」。6月号(アップは9月) は、またまた恒例の「スタッフの勝手な近況から」。まだご存じでない方は、当社Webサイト「プレゼントNOW(近況)」を見てみてください。毎週金曜日 更新で、社内スタッフの近況を紹介するコーナーです。本コーナーで時折、書いている広告の感想みたいなものを、まとめて定期的に「マンスリー広告批評」で ご紹介しています。 既にお読みになった方も、気づかれていなかった方も、少しだけ季節を振り返って、読んでみてください。

(4月27日)
●気になる文章/別に意地の悪い目で見ていなくても、悪文は読むうちに自然に気づくものだ。「紀元前二百余年。天才数学者による超大国・ローマを震撼させ た巨大軍事プロジェクトが存在した。」これは先週、某漫画雑誌の中吊広告で見たコミックのキャッチフレーズだ。なんか、読みにくくはないですか? 「紀元前二百余年。超大国・ローマを震撼させた、天才数学者による巨大軍事プロジェクトが存在した。」あるいは「紀元前二百余年。天才数学者による巨大軍 事プロジェクトが、超大国・ローマを震撼させた。」の方が読みやすい。もしも社内でこのコピーが出れば、私は当然、修正する。

(7月19日)
●ストレートがいい/高島屋の「ミズギとユカタはタカシマヤ」のキャッチ、分かりやすくていいです。水着と浴衣のモデルのビジュアルもストレートでいいで す。きっと、来店数上がると思います。●屋外看板がいい/でも、分かりやすいと言えば、いまJR五反田駅ホームから見える東口前のビル上の、空いてる屋外 看板に書かれた電話番号ですね。ホームからとっても目立つ看板なので、実証広告になっているし、連絡先がひと目で分かる。最近、「広告が機能しているか」 という言い回しをよく目にしますが、本当に機能している広告というのは、例えばこの屋外看板のスポンサー募集だと思います。あとは「機能している」と言っ てみたところで怪しい。

(8月17日)
●「私」と「私たち」/某メンソール系のタバコの広告がリニューアルされた。キャッチフレーズは「いい予感は、私の中にある。」恐らく当Webサイトを前 からご覧の方でもご記憶にないかと思うが、前回のキャッチフレーズ「私たちが、見える時間。」について、「私たち」と複数形にしているのが矛盾を生んでい ると指摘(「マンスリー広告批評」01.9月)したが、今回は素知らぬ顔で「私」になっていた。コピーライターが気づいたのであろうか、上司に指摘された のか、スポンサーに言われたのか、真相は分からないが、とにかく(論理的には)この方が幾分かはいい。ただ、ビジュアルだけはモデル2人のショットが続い ているが、一度提案したので変更できないのであろうか。「いい予感は、私の中にある。」というキャッチフレーズと、モデル2人の写真はやはり違和感があ る。“ある、いい予感を持った女性”が、“無意味に2人いる”写真、なのだ。特にコピーが心の内を語っているものだから、写真が2人である限り、違う個性 の2人が同様の心の有り様、それも不規則に生まれる「予感」を同時に偶然、持っている状況を示すこととなり、そこが不自然なのである。「広告にケチを付け ようと思えばすべての広告にケチを付けられる」は、常に私が言っていることで、広告の批評をする場合に戒めねばならぬ点である。あるコピーがいいか悪いか については、プロのコピーライターでさえ意見が分かれるのが普通であり、自分の好き嫌いで批評を始めたら、それは醜いものになってしまう。だから私は、常 にコピーの、しかも論理的な疑問から批評をしているつもりである。例えば「愛だろ、愛。」など、好き嫌いで(ここに限って)言わせてもらえば私は嫌いだ が、その感情に基づいて批判することは絶対にしない。それにこのコピーは、日本語としては何の矛盾もない。さて、改めてそう断っておいて、このタバコの広 告なのだが、やはり私は不自然であり、矛盾を抱えた、つまり消費者にとって意図が分かりにくいコピーであり広告であると、好き嫌いでなく思わざるをえない
●政党広告について/雑誌「広告批評」(8月号)でクリエイター3名が政党広告について論じていたが、この企画はもっと早く行うべきであった。対談そのも のは、確かにクリエイターならではの視点も、いくつか見られて(多くは一般市民の岡目八目の粋を出なかったが、それはそれでよいと思う)それなりに面白く 読んだが、小泉ブームに後押しされての企画とはなんとも情けない。確かに、政党広告への批評はこれまでも見られたが、従来の視点は、一般的な広告の常識と かけ離れたその表現を茶化す粋を出なかった。もう10年以上も政治のPRに関心を持ってきた私としては、ずっと消化不良を感じてきた。今回の対談中の一人 は、日本人の政治意識に言及していたが、政党広告の批評はその点なくしてはできない。政治と広告への広告マスコミの取り組みは、この点でも遅れていると 言ってよい。ただ、この対談の中で、“駄洒落”を使ったキャッチフレーズを提案した広告会社を批判した箇所があったが、“当選という明らかな結果を求めら れる選挙”という特殊事情が絡むポスターにあって、広告案の選択に政党の意見が強く反映するであろうことは容易に想像できる。発言者は、その辺りの事情を よく知ったうえで批判したのかを知りたかった。私とて当事者ではないから、本当の事情は分からない。ただ、以前にこのWebサイトで政党のキャッチフレー ズを批評した際も、私にとって不明な現場の事情と関わる点は明言を避けた。売れなくても責任を取られない広告と選挙のポスターとでは、その是非は別とし て、当事者でなければ分からない事情があるはずだと私は想像する。

(9月12日)
●不可思議なフロアガイド/お台場にある某ショッピング施設に出かけた。ここは2つのモールから構成されているのだが、何の予備知識もなければ施設が2つ に分かれていることに気づかない客はかなりいるはずだ(私も同伴者も友人も迷った)。入り口前に2枚に分かれたフロアガイドがある。しかし、それは2つの モール別に分かれてはいない。実は2つのモールをその名にちなんで島と海のイラスト(マーク)で表現し、店舗をそのマークで区別しているのだが、しかし マークの説明はボード内にはない。したがって、マークが2つのモールを表している意図など、フロアガイドを“初めて見た客”には到底理解できない。フロア ガイドであるからフロア別には分かれているのだが、それが2枚に分かれているが故に、客はこの2枚の意味を逆に理解しようとして戸惑ってしまうだろう。実 はフロアガイドが2枚に分かれている意味は全くないに等しい。2つのモールがありながら、2つのモール別に店舗を分けずに、無意味に(ごちゃごちゃに)2 枚に分けたフロアガイドをエントランス前に設置しているのである。次によく注意して見ると、各店舗は「ファッション」「ライフスタイルグッズ/バラエティ グッズ」「スポーツカジュアル/アウトドア」「コスメティック/ドラッグ/サービス」の4カテゴリーに色分けされているのであるが、この色分けもまず“初 めて見た客”には分からない。「ライフスタイルグッズ」の概念の分かりにくさはご愛嬌としても、色自体が淡い(はっきりと区別し辛い)トーンで区別されて おり、色分けの凡例が右下、つまり最も視線の届き辛い場所にレイアウトされているからである。「4カテゴリーに色分けした」ことと「フロア別に区分した」 意図だけは分かるが、それならば凡例は少なくともフロアガイドの上部にレイアウトされるべきであろう。しかしそれより大切なのは「この施設は2つのモール に分かれている」という情報のはずなのである。フロアガイドでA店が4階にあるという情報を得た“初めて見た客”は、目の前の入り口から入って4階に上 がったとしてもお目当てのA店に直行できる保証はない。フロアガイドの正面入り口は2つのモールの内の片方のものだからである。A店が隣の別のモールで あった場合、4階をいくら歩き回っても決してA店には辿り着けないのである。確かに外壁に2つのモールの名はあるが、正面から入った“初めて見た客”に伝 わり難い位置にその表示はある。“初めて見た客”が、施設が2つに分かれていることに気づかない可能性はかなり高いと私は思う。さらに言えば、2つのモー ルの内、上階の2フロアは片方のモールのものなのだが、そもそもこのフロアガイドが2つのモール別に分かれていないので、そのまま上に上がっていった客は 確実に混乱に陥るであろう。イライラした挙げ句によくよくこのフロアガイドを見ているうち「この製作者は単にフロアの区分の幅を揃えたいが故に、2つの モールの区別を度外視してレイアウトした」という憶測や「“初めて見た客”をあえて迷わせることによって回遊性を高め、各店舗に平均的に購買チャンスを与 えようとした」などという諸説が浮上した。店内にある印刷物のフロアガイドを見ると、2つのモール別に二分した上でフロア毎に店舗を区分しているので、屋 外のフロアガイドよりは分かりやすいのだが、併載されている各店舗の位置を示したフロアマップはやはり2つのモールを明確に区別していない(そもそもモー ルの表記がない)。あたかも各フロアが一体化されているようなレイアウトなのだ。しかし、ここまで分かり辛さが徹底していると、同伴者が言い放った“回遊 性”からの仮説や、ある種、利権絡みの背景を思い浮かべたくもなる。 実は、ここまで酷くはないものの、同様の情報の伝え方は形を変えてしばしば目にするものなのである。コミュニケーションの基本は「情報を、伝えたい相手に 分かりやすい順序で、分かりやすく整理して伝える」のが基本である。「分かりやすい順序で」伝える時、基本的には伝えたい情報の大概念から中、小概念へと 段階的に伝える方が理にかなっている。しかし、この法則が守られていないケースは実に多い。分かりにくいツールの代名詞として出されることの多いマニュア ルの類は、正にこれである。まだ説明もしていない言葉を最初から使ったり、15ページを読んでから10ページを読んだ方が分かりやすい、などという失態が 当然のごとく行われている。「マニュアルはなぜ分かりにくいのか」について、いつかマンスリー広告批評で取り上げてみたいものだ。

バックナンバー
●クリエイターのコミュニケーション能力(1)
●広告雑感アーカイブ(4)
●広告雑感アーカイブ(3)
●CMへの悲鳴と皮肉
●「手紙」という広告
●政治広告の嘘
●広告雑感アーカイブ(2)
●広告雑感アーカイブ(1)
●「さ、」のリユース
●「スタッフの勝手な近況」から(8)
●「リライト」論
●“広告会社”という言葉への大いなる疑問
●CMキャラクターという架空
●ライターと呼ばないで
●「スタッフの勝手な近況」から(7)
●誰がアメリカの広告戦略を担えるのか
●広告と社会との関係
●こんな言葉を広告で見かけませんか?(2)
●私的「三点リーダ」論。
●店頭には責任を持たなくてよいのか?
●「スタッフの勝手な近況」から(6)
●エーペラ文化
●迷走する「広告の迷走」。
●こんな言葉を広告で見かけませんか?(1)
●「スタッフの勝手な近況」から(5)
●コピーライターという言葉
●イメージへの過信
●「スタッフの勝手な近況」から(4)
●コピーライターの性別
●いいコピーライターになるための50の条件
●「スタッフの勝手な近況」から(3)
●「ソリューション」の憂鬱
●自民党宮城県連のテレビCMへの異議申し立て
●「スタッフの勝手な近況」から(2)
●「現代広告の読み方」
●疑似表現について
●「スタッフの勝手な近況」から
●業界誌の広告観
●既成概念への配慮について
●広告スペースを選ぶ必要はないのか?
●チカラ(力)がただいま流行中
●広告批評の限界について
●“広告英語”の現在
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