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「スタッフの勝手な近況」から(2)

マンスリー広告批評〈01.1月〉

「スタッフの勝手な近況」のページで発信された広告に関する私のコメントを、10月〜12月の3ヶ月間まとめてこのセクションでご紹介します。「ああ、そんな広告あったね」なんて、「近況」をご覧になった方もなられなかった方も、どうぞご覧ください。

(10月11日)
インターネットが騒がれ始めた当初、その存在意義さえ疑われていた新聞メディア。そうした“新聞不要説”は下火になったとはいえ、旧来メディアとしての新 たな可能性を模索すべき状況に変わりはないのに、なんだ朝日新聞。またもや今年も「大学受験に朝日新聞」キャンペーンだ。最早、「天下のマスコミに、受験 戦争を容認するかのような主張が許されるのか」などという青臭い批判はやめよう。そもそも広告とはそういう(本音はさておき、が許される)ものだし、そも そも日本の新聞なんてそんなものだ。だけど、この販促キャンペーン、売れ残りのマンションに、いい加減なコンセプトを付けて売っちゃうような、そんないか がわしさが見えてしょうがない。つまり、明らかなイメージダウンが予想されるという意味で広告以下ではないかと思うのだ。朝日新聞からの出題数が多いのは 分かった。だけど、そんなアピールは、広告という手法を使うより遙かにターゲットを絞ることができ、しかも信頼性も高い予備校の教師たちにまかせておけば よいではないか。この広告を容認した広告代理店はさぞかし本音と建前の間で歓喜し、かつ苦笑しているのだろう。「勝とう、あい」に至っては、なぜ週刊文春 が記事に取り上げないのか、理解に苦しむほどである。

(10月26日)
最近、なんか似たようなビジュアルを使った広告が多い気がする。いま露出されているU旅行会社のポスター。両手を広げて空中を浮かんでいるかのようなビ ジュアルは、PARCOの「いっそ、美人に」のビジュアルに似てはいないか。 確か1年以内に露出された他社の駅貼りポスターにも似たようなビジュアルがあった気がする。
もう一つ。某メーカーのりんご飲料で、りんごを丸ごと口いっぱいにくわえているポスターは、あのアムネスティ・インターナショナルのコルクをくわえた有名なビジュアルに似てはいないか。さらにもう一つ。やはりいま露出されている某スーパーのレザージャケットの駅貼りポスターは、明らかにユニクロ・テイスト を踏襲してはいないか。低価格の品揃えを言いたいのなら、他の表現手法もあったのではないか。
以上、1つならともかく、このところ3つ続いたものだから何となく気になった。

(11月10日)
営団丸の内線「四谷」駅・新宿方面ホームに、吊し柿あり。
「秋深し 隣は席を ゆずる人」の俳句(の体裁は整えている)が添えてある。馬鹿馬鹿しいと言うなかれ。くだらないマナーポスターより、よほど印象に残る「広告」だと思った。
「LIFE with WINDOWS2000」のキャッチフレーズにモノクロの人物フォト。お決まりのパターンだけど、業界トップで、しかも余裕がないと、この種のアプローチ で広告は出せない。もう15年くらい昔にキリンビールが出した「愛と勇気と缶ビール」という広告を思い出した。もう、キリンにこんな余裕ないものね。

(11月17日)
今年後半は、1カ月に数件の割で本サイトを通じた新規のお客様との出会いがある。インターネットの普及を正に実感しているわけだが、基本的にコピーライ ターの、特にビジネスを前提にしたWebサイトが少ないのである。もちろん当社にとっては歓迎すべきなのだが、広告を生業とする者たちがこれでよいのだろ うか。また、大手代理店等を除いて、求人広告以外の広告を発信している広告関連企業をほとんど見かけない。これも、明らかなる矛盾である。当社程度の規模 で一般メディアに露出するのにはかなりの無理があるため、いまのところ、おつきあいの名刺広告とタウン誌への広告出稿しか純広告の実績はないが、来年には メディアを選んで“有限会社プレゼントの企業広告”を打ちたいと思っている。

(12月15日
年末のJRのポスターがいいですね。列車の座席に可愛い白クマのぬいぐるみたちが思い思いの格好(キスしてる、寝てる、トランプしてる、話してる、お弁当 を広げてる等)でくつろいでいる写真と全員が寝てる写真を並べて、「行きはゴーゴー 帰りはグーグー」のキャッチフレーズ。車内の細部まで工夫されてて、 可愛くて、本当によく出来た広告だと思います。もう一つ。まだ1回だけ、それも4mくらいの距離からしか見ていないのですが、文庫本の写真に(確か)「川 端康成も 年の瀬は 伊豆でした。」のキャッチフレーズ。何か誘われます。ターゲットをよく考えて作っていると思います。(たまにJRのデスティネーショ ンキャンペーンにある)つまらない写真などなくとも、伊豆の温泉宿のゆったりとした風景が脳裏に浮かんできます。どちらも、ホッとさせてくれました。

(12月26日)
“広告をつくる際の考え方”は、何もマスメディア向けの華々しいステージにだけ役立つのではない。もちろん、パンフレットやカタログ、チラシの類のために のみ存在するのでもない。 たとえば、いま某大手銀行の銀座支店が改装中である。1階フロア(個人向け)が閉鎖されていて、3階で個人・法人両方の営業が行われているのだが、お客さ まを誘導するために“広告をつくる際の考え方”が全く使われていない。つまりは配慮に欠けているのである。利用者はエレベーターで3階に上がるが、まずエ レベーター前に3階のフロア図を設けるべきである。そして個人・法人の窓口の位置を、奥か手前かはっきりと明示すべきである。これがないため、しばしば利 用者は戸惑う。そこには一応スタッフの誘導はあるが、「分かりづらい、イライラした」というイメージは、顧客の脳裏に残ってしまうのではないか。発券機の ボタン表示も、まず個人・法人の別を大書すべきなのに、確か「現金」の文字が目立っていた。これは明らかに、社内処理を優先した情報の送り方である。改装 工事は何日かかるのだろうか。その間、何人の利用者があるのだろうか。相も変わらぬ「家族」がテーマのイラストを使ったポスターで、ウインドウからイメー ジ訴求する暇があったら、“改装に伴うサービス体制の変更”を店頭でしっかり利用者に知らせよ。“広告をつくる際の考え方”と述べたが、本来、お客さまに 対する思いやりさえあれば素人でも簡単に気づくレベルある。ここにも、人間の基本的な能力の低下が見られるのだと私は思う。“聞く能力のない子供”が先 日、NHKのニュースで報道されていたが、“相手を思いやる能力”の低下も最近著しい。ムーディーズの格付けさえ上がれば、あとはお座なりの広告を出して いるだけで預金者は集まる。それが真実なのかもしれないが、正しくはない。
大掃除のシーズンだが、資源ゴミを捨てようとして町内会の担当の方に呼び止められた。
「資源ゴミは、ゴミ処理券を貼らなくてよい」と言う。我が社は以前から、放置された資源ゴミの山を尻目に、生真面目にもゴミ処理券を貼って資源ゴミを出し 続けている。「いや、品川清掃事務所に確認したら、事業系の資源ゴミも有料化されたと確かに言っていましたよ。『守っていない会社があったら教えてくれ、 指導するから』とも言われた」と伝えると 「区から通達がない」という。東京都か、あるいは品川区の広報がお粗末なのである。これも3大新聞の全5段で広告したからよい(したかどうか知らないが) というものではないのである。ゴミ収集所の掲示板になぜ、ポスターを貼らないのだ。実行されるまで貼り続ければいいではないか。町内会の担当者になぜ正式 に通達しないのだ。郵送料がかかるなら、立ち会いの際に清掃車の方から手渡ししてもらえばいいではないか。
やれIT革命だの、インターネット社会だの、情報の流れが格段に進歩しているかのように喧伝されているが、人間のコミュニケーション能力は落ちているので ある。想像以上に情報が伝わりづらくなっている。いまこそ、マス媒体やインターネットばかりでなく、人間が実際に毎日の暮らしの中で目にする案内表示や掲 示板などに配慮を加えるべきである。伝える側に“相手を思いやる能力”が欠けているなら、そういう場面にこそプロの技術が必要なのではないか。 もっとも、苦労ばかりでアカウントを稼げない最も地味な分野に広告代理店が真剣になるわけはないのである。そんな時は、有限会社プレゼントにご連絡くださ い。確実に人を動かせる、利用者に役立つ、またとない広告のチャンスであるのだから。

バックナンバー
●クリエイターのコミュニケーション能力(1)
●広告雑感アーカイブ(4)
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●CMへの悲鳴と皮肉
●「手紙」という広告
●政治広告の嘘
●広告雑感アーカイブ(2)
●広告雑感アーカイブ(1)
●「さ、」のリユース
●「スタッフの勝手な近況」から(8)
●「リライト」論
●“広告会社”という言葉への大いなる疑問
●CMキャラクターという架空
●ライターと呼ばないで
●「スタッフの勝手な近況」から(7)
●誰がアメリカの広告戦略を担えるのか
●広告と社会との関係
●こんな言葉を広告で見かけませんか?(2)
●私的「三点リーダ」論。
●店頭には責任を持たなくてよいのか?
●「スタッフの勝手な近況」から(6)
●エーペラ文化
●迷走する「広告の迷走」。
●こんな言葉を広告で見かけませんか?(1)
●「スタッフの勝手な近況」から(5)
●コピーライターという言葉
●イメージへの過信
●「スタッフの勝手な近況」から(4)
●コピーライターの性別
●いいコピーライターになるための50の条件
●「スタッフの勝手な近況」から(3)
●「ソリューション」の憂鬱
●自民党宮城県連のテレビCMへの異議申し立て
●「スタッフの勝手な近況」から(2)
●「現代広告の読み方」
●疑似表現について
●「スタッフの勝手な近況」から
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