恒例の「スタッフの勝手な近況から」の第3弾。
1月から3月まで、同セクションに記された文章の中から、広告に関する所感をまとめてみました。既にお読みになった方も、無視されていた方も、少しだけ季節を振り返って、読んでみてください。
(1月19日)
お正月に放映された各社CMで気が付いたのは、“宇宙”をテーマにした作品が多かったということだ。これはもちろん、“新世紀”あるいはSF映画 「2001年宇宙の旅」をコンセプトに、代理店各社が企画提案した結果であろう。オリンパスの中谷美紀は道端で宇宙人と出会うし、キリンのラガーは広末涼 子を宇宙飛行士にさせてしまう。第一興商は、空飛ぶ円盤を大量に飛ばせていた。「新型」を謳ったローソンも宇宙飛行士を登場させていたし、進研ゼミの機動 戦士ガンダムも舞台は宇宙だ。CMではないが、年末に見たタワーレコードのセールのポスターもビジュアルは宇宙人。12月にも、ラルクが宇宙飛行士に扮し たポスターがあったし、JR東日本の「冬紀行」キャンペーンも、東日本全体を宇宙に見立てた交通広告を展開している。さらに現在掲出中の週刊プレイボーイ の屋外看板では、爆笑問題と宇宙飛行士が月面に立っている。あぁ、やっぱりみんな、考えることは同じ。
(1月26日)
サッポロビールの中吊り広告のコピーに次のフレーズがある。「平気、平気。だってテクノロジーより、どう考えたって、人間の方がエラい。少なくとも私たち は、そう思っています。」なんだ、この文章。あまりにも幼稚で最初見たとき愕然としたのだが、あえて本当にあえて苦言を呈する。言うまでもないことをあえ て言う気恥ずかしさを十分に感じつつあえて(しつこい!)言うのだが、“人間の考えたテクノロジーが人間よりエラい”などと思ってる人物は、正常な判断力 を養ったある年代以上の層では考えられない。(いや、そもそも人間とテクノロジーとを比較するという考え方そのものが尋常ではないのだが。)その常識以前 のテーマに対して「どう考えたって」という言葉を使う奇妙さ。そしてさらに「少なくとも私たちは」と、あたかも“人間の考えたテクノロジーが人間よりエラ い”という認識が絶対ではないという前提に立った物言いの空虚さ。コピーはここから「毎日を人間っぽく過ごす方のビール」と結ぶのだが、なんか覚えたての 難しい言葉を間違って話す幼児みたいなズレを感じる。苦言を呈したい、というより、この広告を作った人たちって、怖い。
(2月2日)
アサヒとサッポロが競うように展開している消費者キャンペーンには、はっきりと優劣がついている気がする。アサヒは、最近の景品を徹底して“ビールをおい しく飲むためのプレゼント”に絞っているようだ。今回の「缶ビール急冷器」にも一度は試してみたくなるアイデアがある。それに引き換え、苦しいのがサッポ ロの景品。「スーパービジネスマンセット」は、「ステテコ」がキーとなるCMとの連動だが、はっきり好き嫌いが分かれるだろう。「味わいジュークボック ス」は、やはりCMで「おつまみ」にたとえられているが、無理やり「味わい」をネーミングに付けちゃうところといい、何とか景品と(食につき物の)ビール を結びつけようとする意図がありあり。CMの評価は好き嫌いでしかないので述べない。ただ販促面に限ると、アサヒに基本コンセプトの切れと力強さを感じ る。企業収益の面では苦戦が伝えられているが、販売促進の点ではアサヒを支持したい。
(3月30日)
今週の近況は、最近の広告から(単なる)感想をメモしておいたものを一斉に公開してみます。2月下旬からほぼ1ヶ月間のものです。思い当たる広告があったら、一緒に考えてみてください。
●「目にあまる行為!」というマナーポスターの「目にあまる」という言葉は、“目にあまる行為”をしている若者達に理解できるのだろうか(「ぴあ」3.19号にペンネームで掲載済み)
●キリン「淡麗〈生〉」の広告で缶に付けられた水滴の数がだいぶ減らされた。これなら(一消費者として)気持ち悪くない
●新宿京王百貨店のリニューアルオープンのキャッチフレーズは「be changing」。当たり前と言えば当たり前だが、「変わる」「新しい」なる言葉が他社でも目立つ。みんな変わりたい時代らしい
●フォードの「フォーカス」って車の中吊り広告で、「欧州・北米カーオブザイヤー史上初ダブル受賞」という言葉を使っている。日本の賞に「オブ・ザ・イ ヤー」を使うのは過ちとしてもまだ理解はできるが、海外の賞を紹介しているのだから「欧州・北米カーオブジイヤー」って書こうよ。わざわざ国内と差別化す るために中黒まで省略してるんだから
●スーパードライは「スーパードライを超える」、フジテレビは「テレビを超える」、FIREは「あのFIREより香ばしい」。みんな、自分を超えたがっている
●日本テレコムのマイライン登録率が悪いらしい(日本経済新聞3月7日/村上社長談)。これは全くの主観だが、現代感覚に欠ける、というよりアナクロに近 い同社のCM及びポスターが好きになれなかった私としては勝手に合点がいった次第
●Jリーグ開幕を告げる交通広告のキャラクターに起用されているF.トルシエのモデルぶりが板に付いている。スポーツ選手が広告で演技をする際の不自然さ が微塵も感じられない
●サッポロ北海道生搾りのCMは、あれでよいのだろうか? 社長のCM収録シーンをCMで見せる手法はないわけではない。だが、あの人物が本当の社長であるかどうかは別として、すぐに雪印の前社長を思い出してしまった
●生茶が売れたからといって、旨茶に熟茶にまろ茶。世の習いとはいえ、節操がない
●「みんなが家族みたいに楽しめる場所。」楽しそうだけど、楽しくない〈妙典マイカルでした〉。(「ぴあ」4.2号にペンネームで掲載済み)